野鳥がもっと大きく撮れる一眼デジスコ
バードサンクチュアリは、遊歩道や案内板なども整備され、鳥の観察や撮影に最適(写真は戸隠森林植物園)
「一眼デジスコ」に必要なアイテムがわかったら、
実際に野鳥を撮りに出かけてみましょう。
まずは、野鳥がいる場所に出かけなければ始まりません。
そこで、「一眼デジスコ」での野鳥撮影のポイントを、
野鳥写真家の叶内拓哉さんにうかがいました。
「木立や池のある近所の公園であれば、
どこかに野鳥はいるはずですが、
はじめのうちは、鳥の姿を見つけられないものです。
そこで、最初は『野鳥公園』や『野鳥の森』などと名付けられたサンクチュアリを訪ね、
探鳥会やガイドツアーに参加し、野鳥に詳しい方にフィールドを
案内してもらうのがオススメです」と叶内さん。
野鳥の知識が身につくまでは、全国各地にあるサンクチュアリのガイドツアーや
日本野鳥の会などが開催している探鳥会を利用し、
野鳥が現れる場所や時間帯、習性などを教わることが
野鳥撮影を成功させる早道だそうです。
戸隠森林植物園のみどりが池の杭に留まったキセキレイ。鳥によって好んで留まる場所が異なる(撮影/叶内拓哉)
「サンクチュアリで、何種類もの野鳥を見ることができれば、しめたものです。
野鳥は比較的、規則正しく行動します。
そのため、鳥の姿を見かけたら、その場所を覚えておきましょう」と
叶内さんは野鳥の習性について教えてくださいました。
「運が良ければ、その場所に鳥が戻ってくることがあります。
また、その日に戻ってこなくても、翌日の同じ時間に
同じ個体が現れる可能性があります」とのこと。
鳥を見つけたからと追いかけると、森の奥へ奥へと逃げてしまうそうです。
そこで、野鳥が好む場所を見つけ、鳥が来るのを待つようにします。
「一眼デジスコ」をセットし、鳥を待ち伏せして撮るようにすると、
失敗も少なく、落ち着いて撮れるようになります。
戸隠森林植物園内の木道を歩いていると、わずか数m先の枝にアカハラが留まった。一眼デジスコをすばやくセットして撮影(撮影/叶内拓哉)
「どの鳥も人が近づくことを嫌います。
でも、鳥の種類によって、逃げてしまう距離は違います。
例えば、カワセミの場合、本来50〜100mより近づくと逃げてしまいます。
しかし、人間が多く住む都市部に生息するカワセミは、
10数m前後の距離まで近づいても逃げない場合があります。
だから、鳥の警戒心が弱く、近づいても逃げない場所を選んで、
撮影すると、初心者でも野鳥を大きく撮れます」と叶内さん。
具体的に、野鳥に近づける場所をうかがうと「初夏は戸隠」との答え。
今回、叶内さんにお話をうかがうために訪れた戸隠高原は、
全国でも屈指の野鳥観察スポットだそうです。
木道を歩いているだけで、たくさんの鳥の声が聞こえるだけでなく、
肉眼でも見えるような近くの木に鳥たちの姿を見ることができます。
また、こうした有名な野鳥観察スポットは、野鳥との距離が近いことに加え、
多くの野鳥ファンが撮影や観察を楽しんでいるため、情報も多く得ることができます。
叶内さんと戸隠高原を歩いているとき、
「この先の木道の脇に、ミソサザイが頻繁に現れるよ」と
すれ違う際に教えてくださる方がいました。
情報を元に、そのポイントを訪れると、どこかで巣作りをしているのでしょうか、
口にコケをくわえて、ミソサザイが木々の間を行ったり来たりしていました。
叶内さんは、すばやく三脚をセットし、一眼デジスコをミソサザイが頻繁に留まる枝に向け、
姿を現すのを待ちます。
デジタル一眼レフの設定について叶内さんにうかがうと、
「基本的にオートでOK」との答え。
撮影モードは、絞り優先AE(オート)に設定すれば、シャッター速度をカメラが自動的に選んでくれます。
このとき、シャッター速度が遅いと感じたら、ISO感度を上げれば、シャッター速度は速くなります。
「ただし、オートでは露出オーバー(明るく写りすぎる)になる場合もあるので、
液晶モニターで再生画像をよく確認してください。
もし、明るすぎる場合は撮影モードをマニュアルに切り替え、
オートで撮ったときのシャッター速度を参考に、そのシャッター速度を少し速く設定してあげると、
適正な明るさで写るようになります」と明るさについての注意も教えてくださいました。
また、ホワイトバランスもオートで十分きれいに写るそうです。
むやみに変えてしまうと、思いも寄らぬ色になることもあるとか。
ピント合わせは、一眼デジスコの場合は、手動操作になります。
初めて撮影するときは、不安になるものですが、
ファインダーの像を見ながら、スコープのフォーカスノブを回し、
像がいちばんクッキリと見える位置で撮影すればOKです。
三脚は脚の部分をすべて伸ばした状態で首の高さまで伸びるものが必要。一眼デジスコをセットすると、ちょうど顔の高さになる
一眼デジスコは、1000mmを超える超望遠撮影になるため、
カメラのわずかな振動も写真には大きくブレとして写ってしまいます。
これを防ぐためには、エレベーター(センターのポール)を伸ばさなくても、
自分の首の高さまで伸びる、大きめの三脚を用意することが大切です。
素材も安価な金属製よりも、振動をすばやく吸収するカーボン製のものがベストです。
三脚の上にセットする雲台選びも重要です。
一般的な写真撮影用の3ウェイ雲台や自由雲台では、
微妙な向きの調整ができず、一眼デジスコには向きません。
一眼デジスコに向いているのは、ビデオ雲台と呼ばれるものです。
さらに、雲台上部のカメラを装着する部分が前後にスライドする
プレート付きのものが最適です。
このプレートで、一眼デジスコの重量バランスが取れる位置に固定すると、
雲台の動きがスムーズになり、狙った場所で一眼デジスコが止まってくれます。
叶内流のブレ防止策は、ピントを合わせた左手をそのままスコープに添え、軽く上から押さえたまま、シャッターを切ること
目の前の枝にミソサザイが現れると、叶内さんがすばやくカメラを構えます。
左手はスコープを上からそっと押さえるように置き、
右手でデジタル一眼レフのグリップを握り、静かにシャッターボタンを押します。
「パシャ、パシャ」と何枚か撮影すると、撮ったばかりの写真を
見せてくださいました。
「超望遠撮影というと、三脚やカメラから手を離し、ケーブルレリーズで
シャッターを切る人が多いのですが、私は指で直接シャッターボタンを押します。
もちろん、ブレないようにスコープの上からそっと抑えるように左手を置き、
右手はカメラのグリップを軽く握り、シャッターボタンを静かに押します」と
叶内さん流の撮り方を教えてくださいました。
振動をゼロにすることは難しいようですが、
経験的に振動を押さえ込むように、手を添えた方が、
ブレの少ない写真が撮れるそうです。