叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

2月のテーマ
水辺の冬鳥「カモ」を撮って野鳥撮影の基本を学ぼう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(撮影:1月)

写真:オナガガモ

シベリアなど緯度の高い地域で繁殖し、越冬のため日本に渡ってくるカモの仲間。河川や湖、公園の池などで羽を休める姿は見つけやすいので、カモは野鳥撮影のファーストステップとして最適な被写体です。

カモは越冬地である日本でつがいを形成するために、オスは美しい夏羽(繁殖羽)に換羽します。そのため、12月から2月ごろにかけて、一年で最も美しい姿を見せてくれます。

また、体が大きくて撮りやすい被写体でもあります。小型のコガモでも全長38cm前後、大型のオナガガモで全長75cm(オス)はあります。そのため、公園の池などの人慣れしている場所では、デジタル一眼レフの70~300mmズームレンズで撮ることも可能ですが、細かいディテールまで写すには500mmのレンズが欲しいところです。

図鑑写真のようにサイドから全身が見えるように撮る

写真:オナガガモのオス オナガガモのオスです。サイドから撮影すると、クチバシから尾羽まで、各部の色や形がよくわかる写真になります。新潟県阿賀野市。PROMINAR 500mmF5.6FL+TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

まず挑戦したいのが、カモの全身を横から撮った写真です。頭から尾羽の先まで画面に収め、その鳥の特徴がよくわかるように撮るのがポイントです。図鑑のような撮り方ですが、野鳥撮影の基本でもあります。

鳥の姿を美しく写すには、順光(太陽を背にして)で撮ります。晴れた日は曇りの日に比べ、羽の色の鮮やかさが増しますが、その反面、汚い影が出たり、輝度差が大きくなることで羽の白い部分がとんでしまったり、逆に黒っぽい色の部分や影の部分が黒くつぶれてしまいます。そのため、野鳥撮影に最も適した天気は、明るい薄曇りの日だと言えます。

カモを美しく撮れる位置を選び、画面に鳥の姿を収めたら、すばやくピントを合わせます。ピントを合わせる位置は目です。目の後方にある耳羽(ジウ)に合わせるのがベストですが、最初のうちは比較的簡単な目にピントを合わせるようにしましょう。

水面に浮かぶカモを撮るとき、気をつけたいことがもう1つあります。それは、水面への映り込みです。水面に青空が映り込めば良いのですが、曇り空だと白っぽく写り、カモの姿が引き立ちません。可能であれば、対岸の木立などが映り込む位置を探し、水面が暗く写るようにします。

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つがいはオスとメスの両方がくっきりと写る位置から撮る

写真:マガモのつがい マガモのつがいです。ピントは鮮やかな羽を持つオスに合わせ、カメラの位置を工夫し、手前のメスにもピントがくるようにしました。東京都多摩市。PROMINAR 500mmF5.6FL+TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

カモは越冬地でつがいを形成します。そのため、この時期はオスとメスがペアで行動する姿を撮ることができます。撮影時のポイントは、オスとメスの2羽とも全身がきれいに見えるよう、サイドから狙うことです。

写真はマガモのつがいですが、やや手前にメス、奥にオスがいる状態です。このようにカメラまでの距離が異なる2羽を撮る場合は、手前のメスにピントを合わせると、背後のオスがピンぼけになりがちです。こうした場合、できるだけ2羽との距離が同じになる位置を探して、岸を左右に移動します。

このときは、奥のオスとの距離が縮まるように岸を左方向に移動しました。被写体までの距離もあったため、奥のオスにピントを合わせていますが、メスも被写界深度内に収めることができました。

野鳥を撮る場合、構図にも気を配りたいものです。この写真では画面を3分割し、上から1/3に水面と岸の境がくるようにフレーミングしています。また、同時に空が映り込みすぎないように、カメラの位置を高くし、カモがいる位置には、対岸の草むらが映り込むように調節しました。

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風景写真を撮るように季節の風物を盛り込む

写真:マガモ冬の寒さを感じさせる枯れ蓮と雪の組み合わせを狙いましたが、残念ながら雪は降りませんでした。新潟県阿賀野市。PROMINAR500mmF5.6FL+TX07(350mm)+EOS7Dで撮影。

野鳥の撮り方の1つに風景写真的に撮るものがあります。その場所の植生や季節がわかる風物を写し込むと、情感のある野鳥写真になります。

この写真は湖面を覆う無数の枯れ蓮の間で休むマガモの群れを狙ったものです。画面の上側には、わずかに対岸が入るようにし、ピントは画面下から1/3くらいの位置にいるカモに合わせます。こうすると、画面中央のやや下寄りにいるマガモたちと枯れ草にピントが合い、それよりも前と後ろがぼけてくれます。

ピントの合っている部分とぼけている部分が生じることで、画面が煩雑になることを防ぎ、写真が平面的に見えることを防いでくれます。

なお、このときは雪が降りませんでしたが、雪が降ってくれれば、より寒い冬を感じさせる写真になったでしょう。

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カモの飛行シーンの撮影は飛翔写真のファーストステップ

写真:コガモの群れ オオタカに追われ、一斉に飛び立ったコガモの群れ。同じ方向に飛んでゆく群れを横からカメラで追いながら撮影します。新潟県阿賀野市。PROMINAR 500mmF5.6FL+TX07(350mm)+EOS7Dで撮影。

野鳥の飛んでいる姿を撮るのは慣れないうちは難しいものです。しかし、カモが飛び立つ様子は、比較的簡単なので、飛行シーンを撮るファーストステップとして最適です。

写真はオオタカに追われて一斉に飛び立ったコガモの群れです。離れた位置から画面いっぱいに群れを撮るときは、画面中央付近のカモにピントを合わせ、群れの動きに合わせてカメラを動かしながら撮影します。このように飛行する鳥の群れを撮るときは、羽ばたき方がまちまちなので、何枚も撮影して、それぞれのカモの姿がきれいに見える写真を選ぶようにするといいでしょう。

飛んでいる野鳥を撮るときは、カメラを鳥の動きに合わせて動かさなければなりません。このとき重要なのは、安定感のある大きめの三脚と上下左右スムーズに動くビデオ用雲台を使うことです。特に500mmを越えるような超望遠撮影では、写真撮影用の3way雲台や自由雲台では微妙な向きの調節ができません。雲台上部のカメラを装着する部分が前後にスライドするプレートに対応したものが最適です。

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まとめ 様々な表情をみせるカモの撮影に挑戦しよう

写真:叶内拓哉

カモの行動は実に表情豊か、優雅に水面を泳ぐ姿、つがいの仲むつまじい姿、水しぶきをあげて羽ばたく姿、いずれも絵になるシーンばかりです。超望遠レンズを使うことで、カモの美しい姿をより大きく、より鮮明に写すことができます。桜前線の北上とともに北の繁殖地へ向かうまで、様々な表情をみせるカモの撮影に挑戦してみましょう。

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