中野耕志 X テレフォトレンズ/スコープ PROMINARレポート

第5回
フルサイズで撮る秋の風景
PROMINAR 500mm F5.6 FL / TX10

このサイトの作例写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。 

PROMINAR 500mm F5.6 FLとフルサイズのNikon D3X

写真:秋の紅葉

光がレンズを通して結ぶ円形像をイメージサークルといいます。カメラはこの円形を3:2や4:3といった比率の四角形で切り抜くことで写真にしているのです。
一般的なレンズではイメージサークルの中心部が最も画質が良く、周辺部に行くに従って画質が低下しますが、具体的にはシャープネスやコントラストの低下、そして光量低下のため外側ほど暗くなります。安価な望遠レンズや広角レンズなどでみられる画面の四隅が暗く写る現象、これが周辺光量不足です。周辺画質の低下は開放絞りから1~2段程度絞り込めば改善されますが、もともと開放F値が暗い超望遠レンズでは、絞り込むことによりシャッタースピードの低下やISO感度を上げることによる画質低下のリスクがあります。ゆえに絞り開放でも周辺画質低下のないレンズは非常に優秀だといえるでしょう。
前述のようにイメージサークルの中心部ほど画質が優れているので、同じレンズであればフォーマットの小さいカメラのほうがレンズによる画質は有利です。しかしデジタルカメラの総合的な画質はカメラの撮像素子による部分が大きいので、フルサイズカメラが有利といえるでしょう。
フルサイズカメラはイメージサークルの周辺ギリギリまで使いますので、中心部のみならず周辺部の画質をも重視しますし、大面積のフルサイズカメラでは高いレベルでの像の平面性が求められます。レンズ枚数が多く複雑なギミックを持つズームレンズでは像の平面性が保てず片ボケを起こすことがあります。
コーワのPROMINAR 500mm F5.6 FL(プロミナー500mm)は中心部の画質はもちろん周辺画質の低下はほとんどありませんし、像の平面性も高いので、レンズ性能を高次元で要求するフルサイズカメラでも、満足な結果を得ることができます。

PROMINAR 500mm F5.6 FLとフルサイズカメラの相性

写真:雲海

 前置きが長くなりましたが、今回の撮影ではフルサイズカメラとプロミナー500mmの相性を実証すべく、2,450万画素のフルサイズセンサーを搭載するニコンD3Xとプロミナー500mmを携えて、秋の風物詩ともいえる雲海と黄葉を狙いに信州へ向かいました。秋は日中と夜の気温の差が大きく、よく晴れて風のない夜には地表付近に霧が出やすくなります。
とくに川の流れる谷沿いは空気中の水分が多く冷気も溜まりやすいため霧が大きく成長することもしばしばで、これを標高の高いところから見下ろすと雲海として見えるというわけです。雲海が最も美しいのは日の出前から日の出直後なので、夜明け前から三脚を立ててスタンバイします。とくに日の出30分くらい前の、ブルーな時間帯を流れる雲海は幻想的で、流れの美しい部分を切り取るのにプロミナー500mmが大活躍でした。

 風景写真では低感度で緻密な描写を心がけるのが基本で、日の出前の薄暗い条件下といえども高感度撮影は避けるべきでしょう。
低照度下ではAFカメラ/AFレンズといえどもオートフォーカスは正しく作動しませんのでマニュアルフォーカスでの撮影になりますし、
日中でもライブビューを利用してマニュアルフォーカスでピント合わせしたほうが良好な結果を得られますから、
風景写真においてオートフォーカスは必ずしも必要な機能ではありません。
フルサイズカメラではミラーも大型で震動も大きいので、ミラーアップ撮影が有効です。
さらに私はブレを完璧に押さえ込むため、カメラ側もロングレンズサポーターという、一脚のようなもので保持しています。
このように丁寧にピント合わせとブレ対策をすれば、素直にレンズの描写力を評価することができます。
撮影結果は作例をご覧いただければ一目瞭然ですが、ヌケの良さとピントのシャープさ、
そしてフルサイズカメラ使用時の充分な周辺光量と周辺画質の優秀さを実感しました。

  • 写真:PROMINAR 500mm F5.6 FL
  • 写真:PROMINAR 500mm F5.6 FL
  • ロングレンズサポーター使用イメージ。ブレ対策には大変有効です。
写真:黄葉

 風景写真では28-70mmや70-200mmと広角~中望遠域が最もよく使われる焦点距離ですが、見た目と近い画角と距離感なので平凡な写真になりがちです。
ガツンとインパクトのある写真を撮りたいのであれば300mm以上の超望遠レンズ、とくに500mmクラスを使ってみるのがオススメです。圧倒的なクローズアップと圧倒的な圧縮効果は、300mm以下のレンズでは味わえないもので、500mmクラスの超望遠レンズでは、前述のような雲海の部分アップはもちろん、幾重にも重なった山並み、木の葉や木の実のアップ、月や太陽をはじめとする天体など、あらゆる場面で活躍します。これから冬にかけて、東京近郊の方々であれば富士山の山頂に日が沈む「ダイヤモンド富士」を撮影するにもいいですし、来年5月には日本列島の広い範囲で見られる金環食を狙うのもいいですね。風景写真では精緻な描写力が求められますから、500mmまでカバーするズームレンズではやはり力不足です。

写真:ダイヤモンド富士
かといって500mmF4クラスでは重量がありすぎるうえに高価です。そんなときはコンパクトで高画質なプロミナー500mmは最適といえるでしょう。撮影行では28-70mmクラスと70-200mmクラスの標準セットにプロミナー500mmを加えれば、ほとんどのシーンを切り取ることができます。500mmで長すぎるときはマウントアダプターをTX10からTX07に付け替えて350mmF4として使えるのも便利ですね。

写真:PROMINAR 500mm F5.6 FL

 今シーズンは夏の暑さが長引いたためか、どこも紅葉/黄葉の色づきが悪く撮影はうまくいきませんでしたが、色づいた葉や木の実などをクローズアップ撮影するときにもプロミナー500mmは活躍します。ライブビュー利用のマニュアルフォーカスによる完璧なピント合わせと、完璧にブレを抑制することさえできれば、プロミナー500mmは素晴らしく緻密な画を提供してくれますから、迫力のある作品を撮りたいと考える風景写真家向けの超望遠レンズとして、プロミナー500mmをオススメしたいですね。