衝撃の高速連写、ハイビジョン&ハイスピード・ムービー機能をもったEX-F1のデビューから約1年、EXILIMハイスピード機は信じられないほどコンパクト化しました。EXILIM EX-FC100(以下「FC100」)は本体重量145gとEX-F1の1/4にも満たないボディながら、EXILIMハイスピード機の血統の証、"高速連写とハイスピード機能"を引き継いでおり、秒間30コマの高速連写、1280×720Pのハイビジョン映像、そして秒210〜1000コマのハイスピード撮影と、野鳥撮影を楽しくさせる機能はFC100でも健在です。
FC100の特性は、EX-F1のサイズを小さくした分、そのままスケールダウンしたものとは言えません。EX-F1の1秒間に60コマには及びませんが、1秒間に30コマという数値は他のデジタルカメラの連写機能と比べると倍以上の性能を持っていると言えるでしょう。高速連写では600万画素とEX-F1と同じ値ですが、単写時には900万画素と高精細化が図られています。ハイスピード・ムービーも同様で300fpsから210fpsと数値上は下がってしまいましたが、画質はEX-F1と同等、状況によってはF1より良いときもある位です。さらにF1の凄さを実感できた過去の事象を切り取る"パスト連写&ムービー"も搭載されており、これらの機能は、野鳥撮影の可能性を広げる重要な機能で、まさにコンパクトEXILIMハイスピード機と言えるでしょう。
FC100のレンズは、沈胴式と呼ばれる撮影時にレンズが伸びるタイプのもので、約37o〜185o(35o判スチル換算、以下同表記)の光学5倍ズームが搭載されています。コンパクト機がズーム倍率を競っているカメラが増えている中、このボディには丁度よいズーム比ではないでしょうか。デジスコでは高倍率になればなるほど、本体のレンズ性能が問われますが、今回のテストでFC100はテレ端にしても、それほど画質が落ちず安心して使えました。それでも、もう少し望遠側が欲しいときには、HDズームという機能があります。これは画質劣化無しのデジタルズームで、600万画素以下の画像サイズのときに有効になります(ムービーはVGA時のみ有効)。600万画素では、5倍〜6.2倍まで、400万画素では7.5倍まで画質劣化しません。例えば600万画素の画像サイズ設定では、VA3使用時2590oのテレ端が3210oまで伸びるということで、あと少し、大きく撮りたいというとき、とても助かる機能でしょう。
今回はFC100専用のカメラブラケット TSN-DA100で撮影をおこないましたが、これからもう少しその様子を詳しく見ていきましょう。
※CASIO ホームページより
さすが専用設計とあるだけセッティングは簡単。ねじ込み式でアダプターレンズに装着したら、FC100をパチンとはめこみ、下部のネジをFC100の三脚穴にねじ込むだけで完了です。当然この状態で光軸調整はOKとなっています。バッテリーやメモリーカードの交換も、ブラケットから取り外すことなく簡単におこなえます。
DA100にはケーブルレリーズも付属しているので、スコープとアダプターレンズがあれば、即、撮影に出かけられます。
気になるケラレ具合をTSN-VA1/VA2B/VA3、TE-20Hまで試してみました。どのアダプターも光学的に良好で、周辺減光もカメラとアダプターの距離を調整するクリアランス調整で対処できました。作例はTSN-VA3のものを掲げてあります。
TSN-VA3使用時、ケラレのないワイド端は840oから周辺減光もなく良好。ワイド側でのクリアランス調整は、最大に引き伸ばした位置から、少し縮めた位置がベストでしょう。拡大率と画質のバランスが良いズーム域中間の1358oでは、逆に最短に近い位置まで縮めておけば、テレ端まで周辺減光が少ない画像で楽しめました。VA3使用時のFC100のクリアランス調整は普段は短めにしておき、周りの雰囲気を出したいときに伸ばすという使い方が良いでしょう。
こちらもTSN-VA3の画像です。HDムービーでは、スチルの時より若干拡大されるので、1ステップ広角側にシフトしてもOKですが、撮影結果は、スチルのケラレ無しワイド端の時と左右の画角は、ほぼ同じになりました。ワイド側とテレ側のクリアランス調整はスチルの時と同じですが、FC100の表示は4:3の液晶にガイドラインで16:9に囲まれる表示なので、少し暗めの場合、見にくい事もあるので、空など明るめのフラットな画で、一度確認をしてからの方が良いでしょう。
TSN-VA1ではワイド側が800oを切っており、近くの被写体や大きめの野鳥の時には、重宝するでしょう。しかしテレ端が1758oという値は、超望遠が魅力のデジスコという観点からは、少し物足りない感じがしてしまいました。それに対してTSN-VA2Bでは1358oがワイド端という、デジスコらしい値から始まっています。テレ端も2590oとデジスコならではの世界を堪能できる値でしょう。作例でも取り上げたTSN-VA3ですが、840oから2590oとVA1とVA2B両方の世界が楽しめます。TE-20Hは、観察用のアイピースで接続時にTSN-DA10を使用します。拡大率は25倍と4機種中、一番の値で、1275o〜4625oと撮影範囲が広いのも特徴。ケラレの調節もそれほど神経を使うことなく扱えるので、今回の機種の中ではバランスの良い組合せではないでしょうか。
コンパクト・スリム機FC100の露出は、プログラムAEのオート仕様のみで、露出補正は−2〜+2EVで1/3ステップで調整できます。デジスコでは絞り開放が理想なのですが、FC100には絞り優先AVモードがないのが残念なところです。フォーカスに関しては、スチルではオートフォーカスはもちろん、マニュアルフォーカスもあるので状況に応じて使い分けることができるので安心でしょう。それに対して動画のフォーカスは固定焦点かマニュアルフォーカスの二者択一となってしまいます。野鳥の動画撮影では、スコープ側のフォーカス操作で追従するしかないでしょう。 スイッチ類の配列は、動画スタート・ボタンが独立してくれたので、スチルとビデオの撮影切り替えの手間が省けます。また、動画撮影時でも600万画素以下で、10枚まで撮影できるというのも嬉しい仕様でしょう。また高速連写の切り替えスイッチもボディ上部に独立してあります。これは状況に応じて単写と連写を使い分けるとき、スムーズに移行でき、一瞬のタイミングを争う野鳥撮影では、勝敗の分かれ目となる重要な要素と言えるでしょう。
"高速連写+パスト連写"で「もう撮り逃しは有り得ない」とまで云わしめたFC100の連写性能をみていきましょう。600万画素(EX-F1と変わらず)・秒間30コマと撮影枚数はEX-F1の半分になってしまいましたが、それでも他のデジタルカメラでは体験できない高速連写特性をもっています。EX-F1のレポートで詳しく述べてありますが、ここでパスト連写の流れについて軽くふれてみましょう。パスト連写モードの時(シャッター半押しでスタンバイ状態)、実はカメラ内では、もう30コマの画像が常に蓄積され続けています。そして「ここだ!」というシャッターを押す動作で、カメラ内に蓄積された過去の画像から記録し始めます。具体的に言うと、野鳥が飛び立つ瞬間を狙う時、「飛んだ!」というタイミングでは間に合わないことが多いでしょう。原因は撮影者の反応、カメラ動作のタイムラグですが、パスト連写では「飛んで行ってしまった」というタイミングでレリーズしても1秒以内(30fps)なら撮影できてしまいます。EX-F1の60コマ/秒と比べると羽の形の良いタイミングは1/2になってしまいますが、それでも貴重なタイミングを撮り逃がすということはないでしょう。
※「CASIO」「EXILIM」はカシオ計算機株式会社の登録商標です。