軽量樹脂筐体にこだわっていた興和が一転して頑強なマグネシウムボディーに変更された。チクソモールディングという最新の射出成形法による薄肉で高剛性ボディは樹脂に比べ熱による寸法変化も少なく光学機器筐体には現行では最良の選択と思う。頑強な金属ボディーにはネイチャー志向の質感の良いグリーン塗装が施され、ボディーデザイン・性能とも高く評価できる。
確かに「TSN-774PROMINAR」は小さく見える。寸法的な面だけではなく大きく見せない巧みな意匠も功を奏しているのであろう。気持ちとしては他社65mmタイプより小さく感じてしまう。このコンパクトなボディーに77mmの迫力あるシステムが納まっているのであるから驚きである。
バヨネット機構によるアイピース固定はスピーディーで好ましい反面、デジスコ用カメラユニットなどを取り付けると光軸のズレにつながることもあり、そんなに頻繁にアイピースを交換することのない方には特にバヨネットである必要も感じない。しかし、今回のバヨネットは大きさも、本体付属の板バネもダイナミックでしっかりカメラユニットなどを含めた重量にもしっかり対応できそうである。また、アイピースロック機構はデジスコにおいては必須ともいえる機構なので標準装備されたことで安心感が高まった。
頑強な回転式台座が標準装備されている。45度ごとにクリックする場所はあるが、基本的には自由な角度で固定できる。幅広の台座には3/8インチの三脚ネジと回転防止の穴が2つ準備されている。多くのスコープは1/4インチのネジが装備されているのであるが「思いっきり締め上げてください」と自信をもってユーザーにアピールしているのであろう。実際に、3/8インチネジであれば渾身の力で締めてスコープの回転ズレを防止できる気がする。もちろん、3/8から1/4インチに変換するスリーブネジも装備されている。
このアイピース群はかなり高級なものと位置付けて間違い無さそうである。アイピースの防水加工を謳っているが、レンズの大きさや面倒なレンズ1枚1枚のコバ塗りなど丁寧に作っていることがうかがえる。窒素ガスも充填している。値段は高いが、その価値は充分あるように思う。
今回の新型アイピースを従来のTSN-664やTSN-824Mに取り付けることはできないが、TSN-660やTSN-820MシリーズのアイピースをTSN-774/884に取り付けるためのアイピースコンバーターが2種用意されている。(TSN-EC2/EC3)
デジタル一眼レフカメラ用のフォトアタッチメントが2種用意されている。なんと言っても業界初の680mm〜1000mm(F8.8〜13.0/TSN-774時)のズームができる「TSN-PZ」が特徴的である。950mm(F12.3/TSN-774時)の単焦点TSN-PA2Dも準備されている。※「TSN-PZ」はAPS-C/フォーサーズ フォーマット対応のアタッチメントです。
ライバルは他社の80-82mmクラス。82mm口径に比べ比較的写しやすい77mm口径はコストパーパフォーマンスがかなり高いスコープであると言える。上位機種の「TSN-884」は海外機種と肩を並べる価格帯に入っているので「TSN-774」が格安に感じる。
私の作風には「TSN-884」が合っているので普段使っているのだが、やはり、撮影成功率は低いと言える。しかし、評価のために「TSN-774」を使うと一気に成功率が高まり(TSN-884の5〜6倍程度)驚かされる。ピントも合いやすくAFも心なしか迷わずに合焦してくれるように感じる。さすがにフローライトクリスタル88mm口径の「TSN-884」の前後ボケやシャープさには敵わないが成功率が高いのでシーンの良い画像を捉えやすくなることのメリットのほうが大きく感じる。但し、実質30倍がベースであることでデジスコらしい迫力画像には若干倍率不足を感じるが光学性能の良いデジタルカメラが出ればテレ端まで使えるので特に問題は無いように思う。「TSN-774」は解像感、色合い、適度な被写界深度は入門者〜ベテランまで誰でも楽しめるデジスコ向きのスコープであることは間違いない。
「TSN-774」はある意味歴史に残るスコープになると思う。なにより、デジスコで使う上では80mmクラスの迫力で、写し易い被写界深度を持ち、撮影においても近〜遠まで歪みを気にすることなく写せること、そして驚くほど高い解像感。某社78mmスコープと同等以上と言えそうである。ある程度、しっかりしたスコープでデジスコを始めたい初心者の方、60mmクラスからのアップグレードを希望のユーザーにとっては選択肢のトップに来るスコープであると思う。