レンズの基本的な役割
レンズはカメラシステムの一部として、対象物の画像を正確に捉えるために使用されます。FA分野では、部品の検査、製品の位置決め、ロボットの視覚システムなど、多岐にわたる用途で使用されます。高精度な画像取得が求められるため、適切なレンズ選びが不可欠です。
レンズの種類
FA分野で使用されるレンズには、主に以下の種類があります。
固定焦点レンズ

固定焦点レンズは、焦点距離が固定されており、ピントを合わせる機構を持たないレンズです。単焦点レンズとも呼ばれ、ズームレンズに比べて歪みや収差が少なく、構造がシンプルなため解像力が高く、画質が良いのが特徴です。固定焦点レンズは、特定の視野角と撮影距離に最適化されているため、設置が簡単で価格も比較的安価です。
テレセントリックレンズ

テレセントリックレンズは、カメラに搭載される撮像素子と同サイズのものを撮像する際に用いられます。このレンズは、対象物からの平行光のみを像化する仕組みを持つため、周囲からの入射光の影響を受けません。そのため、同サイズの遠くのものと近くのものを、同サイズで共にピントがあった状態で撮像できます。寸法測定や高精度な検査に適しており、製品の正確な評価が可能です。
マクロレンズ/マクロズームレンズ
マクロレンズは、近接距離の撮影を目的に設計されたレンズです。物体(被写体)を大きく見せるためのレンズであり、微細な部品や細部の検査に適しています。その中でも、マクロズームレンズは倍率を連続的に変えることができ、焦点距離が一定(変化しない)であることが特徴です。これにより、詳細な画像を柔軟に取得することができます。
ラインスキャンレンズ

ラインスキャンカメラ用に設計されたレンズで、連続的なライン状の画像を取得するために使用されます。高速生産ラインでの検査や品質管理に適しており、製品の欠陥検出や寸法測定に効果的です。ラインスキャンレンズは、動きのある物体を高精度で撮影するために必要不可欠です。
バリフォーカルレンズ

バリフォーカルレンズは、焦点距離を自由に変えることができるレンズです。ズームアップやズームアウトが可能で、可変焦点レンズとも呼ばれます。撮影範囲を変更するとフォーカスが合わなくなるため、手動でフォーカスを取り直す必要があります。設置後に調整が可能で、ズームレンズよりも安価であることがメリットです。設置時に最適な撮影範囲を設定し、その後も柔軟に調整できます。
ズームレンズ
ズームレンズは、画角を連続的に変化させることができるレンズの一種です。バリフォーカルレンズと異なり、画角を変えてもピントの位置は変わりません。そのため、設置後も連続的な画角や光学倍率の変更が可能です。ただし、カメラのフランジバックがずれていると、ズーム時にピントがずれてしまうため、使用の際にはレンズかカメラにフランジバック調整機構が必要です。ズームレンズは、柔軟な撮影が求められるシーンに適しています。
レンズ選びのポイント
レンズを選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
イメージサイズ
イメージサイズとは、レンズを通して見ることができる範囲です。カメラのセンサーサイズ以上のイメージサイズを持つレンズであれば使用可能となります。適切なイメージサイズを選ぶことで、撮影対象物全体を正確に捉えることができます。


焦点距離
撮影範囲は、焦点距離とセンサーサイズ、レンズから被写体までの距離(WD)とで決まります。焦点距離はレンズからイメージセンサーまでの距離のことで、焦点距離が短い場合、広い撮影範囲を得られます。焦点距離が長い場合、被写体を拡大して見ることができます。被写体を撮影する際、被写体のサイズ・WDを選択に合わせて、焦点距離違いのレンズを選ぶことができます。

F値(絞り)
レンズの明るさは焦点距離をレンズの有効径で割った数値で表現します。この数値がF値です。F値は絞りで調節することができます。F値が小さい(明るい)レンズは、より早いシャッター速度で撮影できます。F値を大きくする(暗くする)と、ピントの合う範囲(被写界深度)が広くなります。


被写界深度
被写界深度とは、ピントが合っている範囲のことを言います。被写界深度は、F値、WD、焦点距離によって決まります。F値を大きくする、焦点距離を短くする、WDを長くすることで被写界深度は深くなります。被写界深度の調整により、撮影対象物の全体を鮮明に捉えることができます。

ディストーション
ディストーションとは、像が歪む現象です。撮影した画像が歪んでしまうと、撮影した被写体は実際の形状とは異なる画像となります。つまり、検査や画像処理を行う際に被写体の位置情報に誤差を発生させてしまいます。そのため、低ディストーションのレンズは高性能であると言えます。

解像力
解像力とは、物体の輪郭やディテールをどれだけ精細に再現できるかを表しています。解像力は1mm幅内に描かれた白黒縞の判別できる本数で表現することができます。縞模様は縞の細さで表現され、lp(ラインペア)/mmで表します。

フローティング
フローティング機構とは性能劣化を抑えるために効果的な機構です。近距離収差補正機構とも言います。通常のレンズではピント合わせの際にレンズ全体を動かしています。その結果、WDによって性能が変化する現象が発生します。フローティング機構を搭載したレンズでは、内部のレンズ群を複数に分け、独立して動かすことで、WDによって性能劣化しないように抑えています。そのため、あらゆるWDでも最高に近い性能を発揮することができます。


レンズのメンテナンス
適切なレンズ選びだけでなく、レンズのメンテナンスも重要です。定期的な清掃や点検を行うことで、レンズの性能を維持し、長期間にわたって高品質な画像を得ることができます。メンテナンスを怠ると、レンズの性能が低下し、画像の品質が損なわれる可能性があります。清掃や点検の際には、専用のクリーニング用品を使用し、慎重に行うことが大切です。
まとめ
FA分野におけるレンズの選び方は、イメージサイズ、焦点距離、F値(絞り)、被写界深度、ディストーション、解像力、フローティングなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。適切なレンズを選ぶことで、製造プロセスの効率を高め、品質を向上させることができます。具体的な用途や環境に応じて、最適なレンズを選び、定期的なメンテナンスを行うことが重要です。レンズ選びにおいては、専門的な知識と経験が求められます。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、最適なレンズを選定することができます。
FA分野におけるレンズの選び方を理解し、適切な選択を行うことで、製造現場の効率と品質を大幅に向上させることができるでしょう。
レンズ選びにお困りの方はお問い合わせフォームよりご相談ください。