通信規格で変わる産業用カメラの性能と可能性

通信規格で変わる産業用カメラの性能と可能性

FA(ファクトリーオートメーション)において、産業用カメラは画像処理検査の要となる存在です。撮像された画像は、通信インターフェースを通じて処理ユニットへ転送されますが、この「通信規格」の選定が、システム全体の性能や安定性に大きく影響します。本コラムでは、代表的な通信規格の違いと、それぞれの特長・適用シーンについて解説します。

通信規格とは? 

通信規格とは、カメラとコンピューター(画像処理ユニット)間で画像データを転送するための接続方式です。画素数やフレームレートが高くなるほど、転送するデータ量も増えるため、適切な通信規格の選定が不可欠です。 

CoaXpress
CoaXPress

GigE

主な通信規格の特長 

GigE(Gigabit Ethernet)

GigEは、産業用カメラにおいて広く採用されている通信規格の一つです

転送速度

1Gbps(標準)、2.5Gbps/5Gbps/10Gbps(上位規格あり)

ケーブル長

最大100m(Cat5e以上のLANケーブル使用時)

特長

・一般的なネットワークインフラを活用可能

複数カメラのネットワーク接続が容易 

PoE(Power over Ethernet)対応モデルもあり、配線の簡素化が可能 

注意点

高速モデルでは対応するNICやケーブルの選定が必要 

帯域制御やパケットロス対策のためのネットワーク設計が重要 

GigEは、汎用性と拡張性に優れた通信規格であり、システムの規模や用途に応じて柔軟に構成を変更できる点が大きな魅力です。 

CoaXPress(CXP) 

 CoaXPressは、産業用カメラ向けの高速・高信頼性通信規格で、同軸ケーブルを使用して画像データと制御信号を同時に伝送できるのが特長です。

規格は、複数のバージョンが存在し、用途に応じた選定が可能です。 

転送速度

1.25Gbps(CXP-1)~12.5Gbps(CXP-12)/1レーンあたり

 ※複数レーン構成により最大50Gbps以上も可

ケーブル長

最大100m以上

特長

高速、長距離伝送が可能 

同軸ケーブル1本で電源供給・制御・画像転送が可能(PoCXP対応) 

リアルタイムトリガーや低遅延通信に対応 

高画素・高速フレームレートのカメラに最適 

注意点

・専用のフレームグラバが必要 

ケーブル・コネクタが規格専用で、コストが高くなる場合あり 

システム設計において信号整合性やノイズ対策が重要 

CoaXPressは高精度・高速処理が求められる検査工程や、長距離配線が必要な環境において非常に有効な選択肢です。

 CameraLink

 CameraLinkは、産業用カメラ向けに設計された高信頼性・高速通信規格で、画像処理のリアルタイム性が求められる現場で広く使用されています。Base、Medium、Fullといった構成により、転送速度やチャンネル数を柔軟に選択できるのが特長です。 

転送速度

最大6.8Gbps(Full構成時)

※Base(2.04Gbps)、Medium(4.08Gbps)など構成により異なる

  • ケーブル長

最大15m(標準仕様)

  • 特長

・高速・高信頼性の画像転送が可能 

リアルタイムトリガーや同期制御に強み 

フレームグラバとの組み合わせで安定した処理が可能 

検査装置や計測機器との親和性が高い 

  • 注意点

専用のフレームグラバが必要 

ケーブル長に制限があり、設置環境に配慮が必要 

ケーブルやコネクタの取り回しに工夫が必要 

CameraLinkは、リアルタイム性と信頼性を重視する検査工程や、精密な画像同期が求められるシステムに最適な通信規格です。構成の選択によって、システムの規模や処理能力に応じた柔軟な設計が可能です。 

USB3 Vision

USB3 Visionは、産業用カメラ向けの高速画像転送規格で、USB 3.0インターフェースを活用して、高解像度・高フレームレートの画像を安定して転送するために設計されています。AIA(Automated Imaging Association)によって標準化されており、GenICam準拠のソフトウェアとの高い互換性を持ちます。 

転送速度

最大5Gbps(USB 3.0の理論値)

※実効速度は約3.2Gbps前後(機器や環境により異なる) 

ケーブル長

最大3~5m(USB 3.0標準)

※アクティブケーブルや光ファイバーを使用することで延長可能 

特長

高帯域・低コストでの画像転送が可能 

プラグ&プレイ対応でセットアップが容易 

GenICam準拠により、画像処理ソフトとの連携がスムーズ 

電源供給可能(USBケーブル1本で通信+電源) 

注意点

ケーブル長に制限があり、長距離配線には工夫が必要 

一部の高性能カメラでは帯域不足になる可能性あり 

USBポートの品質やPC側の設計に依存する部分がある 

USB3 Visionは、コストパフォーマンスと導入のしやすさを重視するシステムに最適です。特に、中~高解像度の画像をリアルタイムで処理する用途において、画像処理ソフトウェアとの連携性が高く、開発効率の向上にも寄与します。 

 

 

まとめ

通信規格の違いは、カメラの性能だけでなく、システム全体の設計や運用に大きく関わります。興和オプトロニクスでは、用途や環境に応じた最適な通信規格を備えたカメラを多数ラインアップしており、現場の課題に応じた柔軟な提案が可能です。 

お問い合わせ

製品やサービスに関する
各種お問い合わせはこちらまで

お急ぎの方は電話でご相談ください

03-6272-5716

電話受付時間:月~金曜日(弊社休業日を除く)9:00~17:30